日本産植物精油の微生物発育阻止作用
‐モミ,ヒバ,ユズ,ゲットウについて‐
村上 志緒a,b,牧野 江里子a,小池 一男a,加藤 文男a,二階堂 保a,林 真一郎b (a東邦大・薬,bグリーンフラスコ研究所)
植物各部より主に水蒸気蒸留法で抽出される精油は、鎮静作用,抗菌作用などの多様な効果を得ることを目的に、アロマテラピー(芳香療法)の材料として用いられている。近年、欧米をはじめ日本の医療分野において、西洋医学と相補・代替療法を組み合わせて個々の患者に提供する統合医療への取り組みが始まり、アロマテラピーについても、統合医療における植物療法としてのエビデンス(科学的証拠)の蓄積研究が重要性が増してきた。精油の抗菌作用については、一般的に抗菌スペクトルが広いこと、揮発性や皮膚への浸透性が良く、適応が容易であることなどから様々な現場での活用が期待されている。日本では,欧米で用いられている精油をこれまで主に活用してきたが、新しく4種の日本産植物から抽出される精油をアロマテラピーに応用することを目的として、それらの基本特性を明確にするために、微生物発育阻止作用を検討した。
【方法】
下記の4種の精油を対象に、4種の微生物に対する発育阻止作用をペーパーディスク法、液体希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)測定、及び最小殺菌濃度(MBC)測定、ペトリ皿裏返し法を実施した。また、これまでに微生物発育阻止作用が報告されているティートリー
Melaleuca
alternifolia(フトモモ科)の葉部から抽出した精油を対照として用いた。
※対象精油
北海道産モミAbies sachalinensis(マツ科)の葉部
青森産ヒバThujopsis dolabrata(ヒノキ科)の木部
山口産ユズCitrus junos(ミカン科)の果皮
沖縄産ゲットウAlpinia speciosa(ショウガ科)の葉部
※検定菌
Escherichia coli ATCC25922
Staphylococcus aureus ATCC25923
Candida albicans JCM1542
Aspergillus fumigatus JCM1738
【結果】
・全対象精油について、濃度依存的に微生物発育阻止作用が観察された。
・MICでは、ヒバ>ゲットウ>モミ>ユズの順で微生物発育阻止作用が大きかったが、MBCではゲットウ>ヒバ>モミ>ユズの順で作用が大きく、ヒバ精油は静菌的、ゲットウ精油は殺菌的に作用することが示唆された。
・ヒバ、ゲットウの精油は、ペーパーディスク法、液体希釈法、ペトリ皿裏返し法のいずれについても細菌及び真菌に対して強い微生物発育阻止作用が観察された。
・モミ精油は、ペーパーディスク法、液体希釈法では細菌及び真菌に対して発育阻止作用を示したが、ペトリ皿裏返し法では示さず、揮発度の小さい成分による作用であることが示唆された。
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精油の揮発成分により発育を阻止された部分が阻止円となって現れる。
阻止円直径が大きいほど発育が阻止されたことを示す。
ヒバ精油では抗菌作用に優れるティートリー精油よりも直径の大きな阻止円が形成された。