ミルクシスルは肝臓疾患に関する効果をもつとして古くから用いられている。ミルクシスルの成分であるいくつかのフラボノリグナン誘導体の生化学的作用についてアフリカミドリザルの肝細胞を材料として研究した。フラボノリグナン誘導体の作用を検討するためのパラメータとして、細胞の代謝活性の指標である細胞増殖率、タンパク質及びDNAの生成、LDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)の酵素活性を選択した。シリビニンとシリクリスチンはこれらのパラメータに対して、顕著な刺激作用を示した。一方、イソシリビニンとシリジアニンは作用を示さないことが明らかになった。腎細胞毒素とされているパラセタモ−ル、シスプラチン、ビンクリスチンによってダメージを受けた肝細胞に関するin vitro の実験系では、ダメージを化学的に誘発する前後にシリビニンで処理することによってダメージの軽減や回避、再生の促進が可能であった。生体内においてもこれらのフラボノリグナン誘導体が同様に作用することが考えられる。
【解説】ミルクシスル(キク科オオアザミ属:別名マリアアザミ、ノゲシ)は、肝臓での解毒の対象となる様々な毒性物質によってもたらされる細胞破壊から肝臓を保護、再生して肝機能を活性化する作用を持つメディカルハーブとして用いられており、その作用機序について研究されています。生体活性をもつ抽出成分は単離されてシリマリンと名付けられています。このシリマリンはいくつかの成分の混合物であり、主な構成物質はシリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、シリジアニンであることが解明されています。これらのどの成分がシリマリンのもつ効用の主たる要因であるのかは興味深いところであり、本研究ではこれらの各成分が肝臓の細胞破壊に関してどのように作用するかを、前述のパラメータを指標にした肝細胞の再生と代謝活性の評価、そして解毒機能の状態評価によって検討しています。パラメータのひとつであるLDHは、解糖系の最終段階に、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)によるピルビン酸から乳酸への分解を触媒する重要な酵素です。解糖系とは、グルコースを分解することにより、生命活動のためのエネルギーを得るための代謝経路であり、LDHの活性の上昇を観察することにより、生命エネルギー産出の効率性について検討することができます。
ミルクシスルの効用については、肝臓保護・再生に加えて、抗ガン作用や抗炎症作用が報告されています。これらの作用発現メカニズムについては未だ解明されていないところが多いのですが、細胞保護、炎症の発現、発ガンに関与する様々な遺伝子の発現を調節する転写因子NF-kBの活性に作用を及ぼすことによる可能性が考えられています。
【参考】詳細は以下の論文をご参考ください。
Sonnenbichler J. (1999) Stimulatory Effects of Silibinin and Silicristin from thr Milk Thistle Silybum marianum on Kidney Cells, J Pharmacol Exp Ther 290(3):1375-1383
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