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 【海外の最新研究を紹介】 メディカルハーブリサーチ No.18
「セントジョンズワートの成分ヒペリシンを局所的に用いた光線力学的療法は繊維肉腫での腫瘍の成長を抑制する」

  発行:2002年2月1日 グリーンフラスコ株式会社
Text by Shio Murakami (グリーンフラスコ研究所)

 

 セントジョンズワートの成分である天然の光感作物質ヒペリシンに関して、マウスの体内での抗ガン作用についての検証が行われた。繊維肉腫細胞G5:1:13を接種されたC3H/DiSnマウスにおいて、腫瘍が40〜80mm3の大きさに到達した接種後およそ17日後に、腹腔内または腫瘍内部にヒペリシン5mg/kgが注入され、その2時間後に局所的にレーザー光(488nm, 150mW/cm2, 180J/cm2)を照射して、光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)が施された。レーザー光の照射のみを施した場合と同様、ヒペリシンのみを施した場合にも腫瘍成長率は同程度を示し、自然に減退していくものはなかった。ヒペリシンを用いてPDTを施したグループでは、処置の3〜4週間後に腫瘍の大きさが顕著に小さくなり、その腫瘍のうちの多くが、処置以前の5分の1以下の大きさとなることが観察された。腹腔内にヒペリシンを注入したマウスの44.4%、腫瘍内に注入したマウスの33.3%は、PDTに対して良好な反応を示し、3mmもしくはそれ以下の深さの処理部位では腫瘍の完全な消失が観察された。一方、ヒペリシンの注入部位として腹腔内と腫瘍内部とを比較したが、マウス生存率には大きな差は観察されなかった。これらの結果により、光感受性物質としてヒペリシンを局所的に用いたPDTは、顕著な抗ガン作用を示し、マウス生存率を増加させることが確認された。

【解説】
 PDTはガンに対する副作用の少ない局所的な治療方法として主に表在性のガンに用いられており、光感受性物質を施してレーザー光を照射することにより、腫瘍を減退・消失させる方法です。用いる光感受性物質固有の励起波長のレーザー光を照射すると、光感受性物質が励起状態に移行し、再び基底状態に戻るときに近傍の酸素分子にエネルギーを与えて活性酸素(フリーラジカル)を生成、この活性酸素がガン細胞にダメージを与えて治療するというメカニズムです。現在、第一世代の光感作薬として米国FDAにより認可された腫瘍親和性のあるフォトフリンが主に用いられています。フォトフリンは静脈注射により、血流に乗って患部に到達して腫瘍に取り込まれ、そこに630nmのレーザー光を照射します。フォトフリンは腫瘍親和性が高いのですが、正常細胞にもわずかに残留して光線過敏を起こすなどいくつかの問題点があり、新たで確実な光感受性物質についての研究が進められており、ヒペリシンもその一つとして注目されています。
 ヒペリシンはジアントラキノンの一種であり、最初にセントジョンズワート(Hypericum perforatum オトギリソウ科 西洋オトギリソウ)から単離された光感受性物質です。ヒペリシンは抗ウィルス作用、ガン細胞に対する毒性や増殖抑制作用などを持つとされており、これらの作用は光によって増強されることが報告されています。そのメカニズムについては現在研究されていますが、プロトンポンプ阻害剤がヒペリシンの示す光毒性に影響することが確認されており、ヒペリシンの抗ガン作用にフリーラジカルである不安定なプロトンが役割をもつことが示唆されています。本論文はセントジョンズワートの成分ヒペリシンの新しい効果的な適用による統合医学の一例として非常に興味深い報告です。


ヒペリシン構造式

【参考】詳細は以下の論文をご参考ください。
Cavarga I, et al. (2001) Photodynamic therapy of murine fibrosarcoma with topical and systemic administration of Hypericin. Phytomedicine 8(5):325-330

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