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 【海外の最新研究を紹介】 メディカルハーブリサーチ No.29
「レモン精油により誘発される大脳辺縁系海馬でのアセチルコリン遊離には性差がある」

  発行:2003年12月1日 グリーンフラスコ株式会社
Text by Shio Murakami (グリーンフラスコ研究所)

 

レモン精油の揮発成分を匂い刺激として与えた場合と更に痛み刺激を伴った場合の雌雄の反応について、ラット大脳辺縁系海馬でのアセチルコリン(Ach)遊離をマイクロダイアライシス法(微小透析法)によって検討した。58匹の雌雄ラットを、対照群を含み、匂い刺激の有無や痛み刺激の有無により4グループに分類した。各群のラット海馬に透析プローブを挿入して、リンガー液の還流を開始して40分後から匂い刺激や痛み刺激を与えた。匂い刺激はレモン精油を敷きわらに100μl滴下して実験カゴの中に拡げることにより付与し、痛み刺激は5%ホルマリンを50μl注射して付与した。還流開始から40分後に刺激付与、計100分間10分おきに還流液を採取して高速液体クロマトグララフィー(HPLC)にて還流液中ACh濃度を測定し、性差、匂い刺激の有無、痛み刺激の有無、時間の4つの要因によって解析した。結果を以下に示す。
1) 元来、Ach濃度には雌雄の差がみられたが、両性において、レモン精油による匂い刺激はホルマリンによる痛み刺激同様にAch遊離を誘発した。
2) 雄では、各刺激、または両刺激付与10分後にAch遊離が確認され20分間同程度のAch濃度が続いた。濃度や経時変化は、どの刺激付与でも同様であった。
3) 雌では、痛み刺激は付与直後からAch遊離を誘発したが、匂い刺激では20分後にはじめて遊離が確認され、両刺激の併用付与により付与直後の遊離が抑制された。
これらの結果から、雌ラットではレモン精油による匂い刺激によって痛み刺激によるAch遊離の調整がみられるが、雄ラットではみられないことが確認され、刺激に対する反応に性差があることが示唆された。

【解説】 神経伝達物質であるアセチルコリン (ACh) は大脳辺縁系の海馬領域において記憶・学習・認知等の機能に重要な役割を担っており、有害刺激を受けたときに細胞外に遊離されて神経内分泌や感情応答に関与するなどの機能を有します。痛みについてはラット海馬での反応が雌の方が大きいこと、嗅覚については、雄ラットの方が雌より多い嗅覚神経を持っていること、女性の方が男性より匂いに敏感で嗅覚誘発電位も大きいことなど性差があるという報告がこれまでにもあります。視床下部から放出される黄体形成ホルモン放出ホルモンとGABA含有ニューロンはどちらも嗅覚神経細胞を基原とすることや、エストロゲンが海馬コリン系を含む大脳辺縁系に重要な機能を有することなどの報告もあり、性差の理由を示唆するものといえるでしょう。
【参考】詳細は以下の論文をご参考ください。
Ceccarelli I, Masi F, Fiorenzani P, Aloisi AM. Sex differences in the citrus lemon essential oil-induced increase of hippocampal acetylcholine release in rats exposed to a persistent painful stimulation. Neurosci Lett. 2002; 330: 25-28.

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